第16回:少子・高齢社会の中の日本の福祉

掲載日:2017年5月1日(月)

高齢者を介護する現場で最近、職員同士の人間関係における「ストレス」の軽減や「燃え尽き症候群」への対処方法として、「アサーション」という言葉が話題になっています。これは、1950年代人種差別で苦悩するアメリカで考案されたもので、単に自己主張するだけではなく、相手と自分の両方の人権を尊重するという理念に基づいて開発されたものです。

人間の自己表現には3つのタイプがあると言われています。

一つ目は『攻撃的な自己表現』で、特徴としては、一方的で威圧的、相手を抑えつけ、強く自己主張するという自己表現です。例えば…ドラえもんのジャイアンは、「おい!その漫画貸してくれよ!」と相手の気持ちを大切にせず攻撃的です。

二つ目は『非主張的な自己表現』です。特徴としては相手を優先し、遠回しに、感情レベルでは納得していないのに、周囲や状況をおもんぱかり、自己犠牲的に自分の気持ちを抑えつける自己表現です。

既にスネ夫に漫画を貸す約束をしていたのび太は、「え?別にいいけど…」と、貸せない理由があるにもかかわらず自分の気持ちを主張できません。

三つ目は『相互尊重の自己表現(アサーティブ)』で、特徴としては、相手の立場や状況を尊重した上で、自分の気持ちを率直に伝えます。

しずかちゃんは、まだこの漫画を読み終わってなくて、貸したくありません。「ごめんね、ジャイアン。私まだ全部読み終わってないの。2、3日で読めると思うから、来週まで待っててくれる?」と、自分の気持ちを伝えた上で、ジャイアンにも配慮しています。

つまり、アサーティブとは、「私」も「あなたも」両方大切にした自己表現なのです。

まず簡単にできることは、自分の感情を相手に伝える際、主語を「あなた(二人称)」にすると、攻撃的・否定的なコミュニケーションとなりがちですので、「私は(一人称)」にし、不快な出来事(怒り)を感じた場合は、自分の感じたことを主観的に伝え、語尾に「○○と言われると、とても悲しいです・辛いです・残念です」と付け加えることを意識してみてください。これだけで率直な気持ちを伝えることができます。特に攻撃的な自己表現をしがちな人は、「怒り」を軽減でき、非主張的な自己表現をすることが多い人は、相手の攻撃性を弱めることができると思います。より良い人間関係をつくるために一度試してみてはいかがでしょう。

(K・T)