心から笑い 笑いも涙も思いきり心から出しましょう

掲載日:2014年2月1日(土)

ユーモアの力 評判のいい校長先生のユーモア

昨今はパソコンの普及により、年賀状の宛名を自分で書く方が少なくなりました。また、裏表ともに自分で印刷するという方も増えてきました。しかし、文面の脇に何か添え書きがしてあると嬉しいものです。写真もいいと思います。

最近、年賀状について面白い記事を読みました。ある田舎の小学校の校長先生が、生徒に出す年賀状の文面に「お餅を食べすぎてお腹をこわしましょう」とか「お年玉を全部、無駄遣いしましょう」「わがままばかり言って叱られましょう」と書いているそうです。普通は逆ですが、年賀状に普通のことが書いてあっても面白くないということで逆のことを書いたところ、このユーモアがうけて生徒にも保護者にもすごく評判がいいそうです。

   笑いは考え方を変える

ユーモアとか笑いは、人生にとってとても大事なものです。先代の日達上人もよく面白い話をされました。

昔、落語界に「昭和の名人」と言われた古今亭志ん生さんとか三遊亭圓生さんという方がみえました。日達上人が大学生の頃、志ん生さんも圓生さんも高座にのぼってみえたそうです。志ん生さんは朝からお酒を飲んでいるので高座で寝てしまうことがしょっちゅうあったようですが、寝ている姿を見るだけでも楽しかったそうです。

このお二人は戦争中、満州の関東軍の慰問に行き、戦地で兵隊さんを前に落語をされたことがありました。しかし、日本が戦争に負けて、急遽逃げなくてはいけなくなったので、朝鮮半島の付け根にある大連まで逃げて逃げて、食うや食わずでたどりついたのがキリスト教の教会でした。その教会のシスターたちは、逃げてきた日本人に一生懸命、食べ物を振る舞ったり、手当てをしたりしていました。

しかし、キリスト教の本部から「そろそろ退去するように」という命令がシスターたちに下っていました。そこへ二人が現われシスターたちに「私たちは関東軍の慰問の為に面白い話をしに来た」と、自分たちの仕事を説明したところ、シスターたちは落語家とか噺家と言うものを知らないので何のことかさっぱりわからなかったと言います。そして、「生きるということは、すなわち苦しみであり、悲しみである。笑いなんてものはない」と言ったといいます。

二人はびっくりして「あなたたちの教えや考え方の中に笑いはないのか」と聞くと、シスターたちは「笑いなどというものは必要ありません。ただ苦しみ・悲しみを癒してあげることが私たちの仕事です」と言うので、二人は「確かにそれも立派な仕事だが、人間には笑いやユーモアというものが絶対に必要なんだ」と言いました。するとシスターたちは「あなたたちは笑いを作り出すと言いますが、作り出して何か意味があるのですか」と言いました。

そう言われて圓生さんが「落語は貧乏を『楽しい貧乏』に変え、悲しさを『素敵な悲しさ』に変えることができるんだよ。だから、同じ境遇でも笑いがある方が楽しいんだよ」と言い、志ん生さんは「俺なんか葬式でも洒落を言ってしまうんだよ。薄化粧をしている色っぽい後家さんを見て『後家さんはいいもんだなぁ。うちの女房も早く後家さんにしようかな』なんてことを言うんだよ。そうすると悲しみも和らぐもんだ」と言ったそうです。

そういう話をしているうちに、沈着冷静だったシスターたちが笑い転げて、不思議なことに、心に希望と勇気がわいてきたというのです。そして、それまでは本部の命令で自分たちも早く逃げようと思っていたのですが、こんなことを言ったと言います。

「ここに残り、最後の一人まで逃げてくる人たちを助けます。それが我々の使命だと気付きました。このお二人の笑いによって元気が出ました」

世の中、不思議なことがあるものです。

   笑いは病気の特効薬

岡山のすばるクリニックという病院の院長さんで伊丹仁朗さんという方がみえます。この方は「とにかく笑うことはどんな病気にも効く」とおっしゃっています。どんな病気にも効くというのは免疫力が上がるということです。そこで病院では、各自に一日ひとつ面白い話を考えさせ、みんなに披露するということをしてみえるそうです。

この根拠になったのは、伊丹先生が吉本新喜劇の協力を得て行なった実験にあります。難波花月で新喜劇を、十九人のがんや心臓病の患者さんに三時間ほど特別に見てもらいました。そのあとに血液中のNK活性を調べたところ、病人なので免疫力が落ちているはずなのに、すべての人のNK活性が正常値になっていたそうです。

面白いことに、NK活性というのは正常値より低いのはもちろんダメですが、高すぎてもダメだそうです。それが、笑うと下がって正常値になるというのです。不思議なことです。

この免疫力を正常に保つための薬があります。注射で打つのですが、それをした場合、効果が現われるまで三日かかると言います。ところが、大笑いした場合は笑った直後に効果があるのです。ものすごい即効力です。

伊丹先生は、作り笑いでも効果があると言ってみえます。作り笑いをするだけでも、免疫力が上がるとともに血流もサラサラになるそうです。逆に、眉間にしわを寄せて怖い顔をしていると免疫力が下がり、血流も悪くなるそうです。だから脳梗塞とか心筋梗塞の予防には笑いが一番いいと言われています。

伊丹先生はこんな面白い実験もされています。その人の好きなもの、たとえば猫が好きな人には猫、子犬が好きな人には子犬の写真を見せると笑顔になり、血流がすごく良くなります。大体の人がきらいな、蛇の写真を見せるとみんな顔がこわばり、血流が悪くなるそうです。そういうことも分かったそうです。

   抜群の鎮痛効果

笑いは痛みに効くこともわかってきました。血液中にインターロイキン6という物質があり、痛みが激しい時はこの数値が増え、大笑いをすると減るという実験を、日本医大の吉野先生という方がされました。

リウマチで苦しんでいる患者さんを集めて、今『笑点』に出ている林家木久扇さん(当時は木久蔵)に落語をやってもらいました。それを一時間くらい患者さんに聞いてもらってから血液を調べたら、痛みの基であるインターロイキン6がどっと下がっていました。驚くのは、その効果が長い人で三週間続いたということです。

リウマチの人は普通、毎日痛み止めを飲みます。それが三週間飲まなくて済んだということは、ものすごい鎮痛効果があったということです。

その話を木久蔵さんにしたところ「私の名前がキクゾーだから」と笑われたそうですが…。

   笑いは疲れた体を元気にする

今から五十年以上前、ノーマン・カズンズというジャーナリストがケネディ大統領の依頼を受けて当時のソ連に行きましたが、帰ってから疲労とストレスが原因で重度の膠原病になってしまいました。全身が痛む病気で、当時の医療では治る確率は五百分の一と言われていました。それをノーマン・カズンズさんは自力で治したと言います。その方法は、ただ笑うことだけでした。部屋に映写機を持ち込んでコメディ映画を見続け、二時間笑うと三十分くらい痛みがなくなるのが自分で分かったのです。

最初は二時間くらいでしたが、長く笑えばさらに無痛の時間が長くなるだろうと続けているうちに治ってしまったそうです。それを学会で発表したところ、ものすごい反響を呼んだのですが、当時は科学的には証明できませんでした。現在ではそれがだんだん証明されてきています。

その後、ノーマン・カズンズさんは医療系の研究を続ける中で、どうしてもシュバイツァー博士に会いたくなり、会いに行きました。会ってみるとシュバイツァー博士は、大変なユーモアの塊のような人だったそうです。

シュバイツァー博士はユーモアを、温度と湿度と精神の緊張等を低下させる方法として用いていたそうです。アフリカは、温度も湿度も高くてすごく暮らしにくく、精神の緊張もあります。それを和らげる方法としてユーモアを用いたのです。実際、博士のユーモアの用い方は芸術的で、もしかしたらユーモアを楽器と心得ているのではないかと思われる程だったと言います。

博士は若いお医者さんや看護師さんと毎晩、必ず会食をしたそうですが、その時必ず、面白い話をしたと言います。そうしたところ、仕事で疲れ切った若いお医者さんや看護師さんがみんな元気になったそうです。博士自身も疲れ切っていたのに、みんなを笑わせることができると自分も元気になったそうです。ノーマン・カズンズさんは、「やっぱり偉いお医者さんはユーモアに溢れている」と確信したのです。

   涙は心のデトックス

笑いには様々な効用がありますが、「胎教」にもいいということが言われています。お母さんが笑うとおなかの子どもがよく動くというのです。逆に、お母さんが怒ったり泣き悲しんだりしていると胎動が悪くなり、発育が悪くなって難産になりやすいということです。

ただ、同じ泣くのでも、怒って泣くとか悲しんで泣くのは体に悪いのですが、感動して泣くのは体に良いそうです。「涙は心のデトックス」と言うように、感動して泣くのも笑うのと同じで体の免疫力が上がるのです。

   思いきり出すことを心がける

「養生」の基本はいいものを食べることと言われていますが、本当に大事なことは「出す」ことです。涙もそうですし、大小便もそうです。そして笑いもそうですし、カラオケで歌うことも同じです。笑いにしろ、涙にしろ、思いっきり心から出すことが大事です。

施しも出すことです、これは特に大事なことと言えます。とにかく大いに笑い、大いに感動して泣き、大いに施しを実行することが健康にとって大変いいことであり、人生にとって大事なことであります。