見えざる世界との対話

掲載日:2025年12月1日(月)

 先月号で、生まれ変わりについての話をしましたが、今月号はその続きです。生まれ変わりというのは、アメリカでは周期的にブームになっているようです。近年のブームは女優のシャーリー・マクレーンが自身の神秘的な体験を『Out on a Limb』(アウト・オン・ア・リム)と題して発表し、それが世界的なベストセラーとなってからです。私も読みましたが、私が強く生まれ変わりに興味を持つようになったのは、この本の数年後に出版された精神科医ブライアン・レスリー・ワイス博士の著書『Many Lives, Many Masters』(前世療法)を読んでからです。この本は全世界で200万部のベストセラーとなりました。

 ワイス博士は名門コロンビア大学を優秀な成績で卒業し、イェール大学大学院で医学博士号を取得されました。ワイス博士は特別な体験をされたのですが、科学者としての立場を考えてそれを発表するのをずっと躊躇していました。何年も悩んだ末にある日、天からの啓示を受けたように、この事実を多くの人々に伝えなければと強く感じ、『前世療法』を出されたのです。

 ワイス博士は一般的な治療法のほかに催眠術を用いて患者の治療を行っていました。特に「退行催眠」と呼ばれる手法を使い、患者を過去の記憶へと導いていくのです。

《キャサリンの症例》

 ワイス博士は、退行催眠によって多くの患者の幼少期のトラウマを探り、それを癒すことで症状を改善することに成功していました。

 ある日、キャサリンという病院の検査技師の女性が来院しました。彼女は不安感、恐怖感、強迫観念、うつ病、そして悪夢に悩んでいました。従来の精神療法では一向に良くならないキャサリンに対してワイス博士は退行催眠を試みました。キャサリンは深い催眠状態に入り、普通の意識状態では決して思い出すことの出来ない数々の出来事を思い出し始めました。子どもの時に飛び込み台の上で後ろから押されて水の中に落ち、溺れて息が出来なくなったこと、歯医者に行った時にガスマスクを顔の上にのせられて、びっくりして息が詰まった時のこと等を思い出しました。そして、一番悲惨な出来事として、3歳の時に酒に酔った父親からいたずらをされたことを思い出しました。その時、父親は彼女が騒がないように、大きな手で彼女の口をおおい、そのためにキャサリンは息が出来ませんでした。これでキャサリンが極度に息の詰まるのを恐れていた理由がわかり、他の症状もすぐに改善されるだろうとワイス博士は考えました。しかし、キャサリンの症状は一向に良くなりませんでした。

 そこで、ワイス博士はキャサリンの潜在意識の深い所にまだ隠された精神的な傷があるに違いないと思い、再びキャサリンに退行催眠をかけ、深い催眠状態に導きました。この時、ワイス博士は「あなたの症状の原因となった時期まで、戻ってください」と大ざっぱに指示しました。すると、キャサリンはなんと4000年前の古代の中近東の人生にまで戻ったのです。彼女はその時代のことをまるで今見ているかのように詳しく語りました。さらに、「古代ローマ時代にも生まれていた」と語り、その時に勉強を教えてくれた先生がワイス博士だったと言うのです。こうした前世の記憶を思い出すたびに、彼女の症状は改善していき、2、3カ月経つと完全に治ってしまいました。

 ワイス博士は当初、〝キャサリンに起こっていることは幻想や夢ではないか〟と疑っていました。しかし、4回目か5回目の退行催眠の際にそれが真実であると確信し始めた頃、またしても不思議な出来事が起こったのです。

 古代の過去世に戻ってその人生の死を再体験した後、キャサリンは自分の死体の上を漂っていました。その後、彼女は人生と人生の間に通過する中間世で出会う霊的な光の方へ、引き寄せられていきました。そして彼女はしわがれ声で「神は私達一人ひとりの中に存在するのだから、無数の神があると言っているわ」と語り始め、さらに彼女は「ワイス先生、あなたのお父さまと小さな息子さんがここにいます」と語り、ワイス博士の家族に関することを語り出しました。

「『アブロムという名前を言えばわかるはずだ』とあなたのお父さまは言っています。お嬢さんの名前はお父さまの名前からとったそうですね。また、彼は心臓の病気で死んだのです。息子さんの心臓も大変でした。心臓が鳥の心臓のように逆さになっていたのです。息子さんは愛の心が深く、あなたのために犠牲的な役割を果たしたのです。彼の魂は非常に進化した魂なのです。彼の死は、両親のカルマの負債を返しました。さらに、あなたに、医学の分野にも限界があること、その範囲は非常に限られたものであることを、彼は教えたかったのです」

 ワイス博士がこの時のことを語っています。

「私は霊的な海を泳いでいるような思いがした。水は心地良かった。鳥肌が立つ思いだった。こうした情報をキャサリンが知っているはずがなかった。どこかで調べることができるようなことでもなかった。父のヘブライ名、1千万人に一人という心臓の欠陥のために死んだ息子のこと、私の医学に対する不信感、父の死、娘の命名のいきさつ、どれもあまりに個人的なプライバシーに関する事柄ばかりだった。しかも、どれも正確だった。この何も知らない検査技師の女性は、超自然的な知識を伝える導管なのだ。もし、彼女がこんな事実を明らかにできるのであれば、他にどんなことがわかるのだろうか?私はもっと知りたかった。私は言った。『誰がそこにいるのですか?誰がこんなことをあなたに教えてくれるのですか?』『マスター達です』とキャサリンは小声で言った。『マスターの精霊達が私に教えてくれます。彼らは私が肉体を持って86回、生まれていると言っています』」

 ワイス博士はこの後、キャサリンを通して何回となくマスター達の言葉を受け取っています。そこから二つ紹介します。まず、高位のマスターからの言葉です。

「大切なことは忍耐とタイミングだ。すべてのことには時がある。人生を焦ってはならぬ。人生は多くの人々が期待するように、うまく予定通りにいくことはない。したがって、人はその時々にやってくるものを受け入れ、それ以上を望まない方がよいのだ。命には終りがない。そして、人は決して死なないのだ。新たに生まれるということも本当はないのだ。ただ異なるいくつもの場面を通り過ぎていくだけなのだ。終りというものはない」

 次は低位のマスターからの言葉です。

「お前達は、強欲を克服することを学ばなければならない。もしもそれができなければ、それは次の人生に持ち越される。そしてその重荷は、ますます大きくなっていく。一回一回の人生で借りを返しておかなければ、後の人生は、ますます困難なものとなるだろう。どのような人生を送るかは、お前達が自分で選択しているのだ。だからお前達は、自分の人生に100%責任がある。自分で選択しているからだ」

 そして、最後の退行催眠の時、キャサリンを通して高位のマスターからワイス博士にメッセージがありました。

「我々がお前に話しかけるのもこれが最後だ。これからはお前が自分の直感で学ばなければならない」

 ワイス博士はこの後、直感力が強くなり、患者や同僚や友人が秘かに隠していることにも敏感に気づくようになり、何も聞かなくても、彼らのことがわかるようになったそうです。

 また、ワイス博士は人生の一部としての生と死の深い意味を知ることによって、忍耐強くなり、以前より人に優しく愛情深い人間となることができたと語っています。さらにこの後、ワイス博士は鮮明な夢の中で別のマスターから講義を受けるようになったそうです。

《前世療法の広がりと社会的反響》

『前世療法』はキャサリンに関する話ですが、『前世療法2』では他の多くの患者の事例が紹介されています。しかし、すべての人が過去世まで到達できるわけではなく、被験者のおよそ3〜5%のみがその体験を得られるようです。

 ワイス博士はこの著書によって一躍有名になり、フロリダの講演会には何千人もの人が詰めかけ、会場に入り切れないほどだったそうです。テレビ番組に出演した時には、テレビのスタッフが「この場で退行催眠を実演してほしい」とワイス博士に依頼しました。これに対してワイス博士は、「退行催眠は非常に個人的な内容であり、プライバシーに深く関わるものです。テレビ放送の場で行うべきではありません」と断りました。それでもキャスターが「私にぜひやってください」と強く希望したので、ワイス博士は退行催眠を行いました。数%の人にしか成功しない退行催眠がうまくいって、キャスターはあっという間に、二つの過去世を見たのです。

 一つは、何百年も前にフランスで木こりとして生きていた時の記憶でした。もう一つは、アメリカ南西部でインディアンだった頃の記憶です。インディアンだった時の過去世に戻ると、彼は自然との一体感について語り、その人生が終わる時、とても平和な気持ちで死に移行し、死も自然の過程の一環だと語りました。テレビ局のスタッフは、この成り行きにびっくりしました。というのは、キャスターは今世でも、余暇活動として、森に入って木を切ることをとても好んでいたからです。フランスで木こりをしていたことは、彼の今世にも非常によく合致していたのです。そしておもしろいことには、インディアンとなって彼が自然や死について語ったことは、現在の彼とは、およそかけ離れた発言で、現在の彼ならば決して口にしないようなことでした。

 この番組の反響はとても大きく、数日間、地方ニュースで続けて放映されたということです。

 生まれ変わりの話は次回も続きます。