第14回:少子・高齢社会の中の日本の福祉

掲載日:2017年4月21日(金)

認知症は「病気」ですから、“悪気があって、嫌がらせをしているわけではない”と介護者は頭で理解していても、「あなた、何度言ったらわかるの」、「お母さん、私は盗んでませんよ」、「おじいちゃん、そこはトイレじゃないでしょう」などと、思わず口にしてしまいます。

これらの言動が日常的に習慣化してしまうと、「相手が悪い」という感情が蓄積され、無意識のうちに「怒り」で対応してしまいます。そして最悪の場合、認知症高齢者の方に対して、心理的・身体的な抑圧行動をとってしまうのです。

「怒り」は、自分を危険にする状況を安全なものに変えようとするための「防衛本能」ですが、認知症高齢者と接する立場にある人には、この「怒り」をうまく制御していくことが求められます。具体的な方法として、心理療法の側面から『アンガーマネジメント(怒りの感情を自己管理する)』が注目され、日本でも多数の書籍が発行されていますし、研修会も各方面で開かれています。
「怒り」が生まれるのには3段階あるとされています。

①出来事と遭遇し、②出来事に意味づけ(価値づけ)をした結果として、③「怒り」が発生するとしています。そしてこれは、人間がそれぞれ持っている価値観によって怒りが発生するかどうか決定されるとされています。例えば、友人と待ち合わせをしていて、事前の連絡もなく、約束の時間に来なかったとします。その時、「怒らずに待てる時間は何分ですか?」と質問すると、〝10分以内なら〟〝30分でも待てる〟〝1分でも遅刻したら相手に電話をする〟というように、いろいろな人にわかれます。これらはすべて、それぞれの価値観により決まるのです。

価値観とは、それぞれが持っている「善悪」や「こうあるべき」、「こうすべき」という見方・基準です。「怒り」は、この自分の「べき」が大きく作用するのです。それゆえ「べき」が多い人ほど、自分の「べき」と異なる出来事と遭遇した場合、「怒り」が出るのです。

怒りが発生してから、その怒りが頂点に達している時間はだいたい6秒程度と言われています。その「怒り」を制御するためには、「自分を変える」ことが重要だとして、「対症療法」と「体質改善」の2つの方法が勧められています。

怒りが発生した時、①怒りの段階を分け、②自分が落ち着く言葉をかけ、③自ら思考を停止させ、④ものを観察し、⑤その場を離れ、⑥楽しいこと、好きなことを考えることを「対症療法」と言います。

そして①怒りの強さの段階をメモにとり、②自分の怒りの種類を知り、③思い込みを変えるのを「体質改善」と言います。

介護する人が「怒り」を制御できれば、そこは認知症高齢者にとって最良の生活環境となり得ます。

次号で「アンガーマネジメント」についてより詳しく説明させていただきます。

(K・T)