第11回:少子・高齢社会の中の日本の福祉

掲載日:2017年3月31日(金)

「うちのおじいちゃん、認知症かもしれないから病院で検査してもらいたいけど、なかなか病院に行ってくれない・・・」という悩みを抱えている方はよくいらっしゃいます。というわけで今回は、こういう場合にどう対応すればよいかという話をしたいと思います。

病院受診を拒否するのは、これまで健康で医者にかかったことのない高齢者の方に多く見られます。また、こちらが一生懸命に病院に行くように言えば言うほど、よけいに拒否するようになる傾向があるようです。こちらが心配して病院に行くことをすすめても、納得してはくれません。

認知症ケアの原則は、「説得」よりも「納得」です。相手に病院に行くことを「納得」していただくために、病院に行くことを拒否する理由を考えてみることが大切です。“これはただのもの忘れで、病気ではない”と思い込んでいる方もあれば、検査することで結果が判明することに不安を感じている方もいます。また単に病院に行くことを“億劫”と思っている方もいます。それぞれに“病院に行きたくない”という理由があるのです。

ではどのように「納得」していただくかですが、例として「健康で長生きしてほしいから、念のため健康診断を受けに行きましょう」という言葉に添えて、病院に行くついでに好きな物を食べに行ったり、好きな場所に寄ったりするなど、「楽しみ」と思えることをつけ加えて伝えてみると上手くいく場合があります。

家族以外の第三者である医師から「今は健康ですが、年齢を重ねると心身に不都合がでてきますので、念のため検査をしておきましょう」と検査受診を勧めてもらうことで納得される方もいらっしゃいます。さらに、「市長さんから長寿のお祝いに無料の検査案内が届いたから、この機会に一度検査に行きましょう」という説明で「納得」された方もいらっしゃいます。

いろいろと例を挙げましたが、認知症の症状の現れ方は人それぞれ異なりますし、人の性格も様々ですので、挙げた方法を試して必ず奏功するとはかぎりません。

認知症の診断を受ける場合は、日本老年精神医学会専門医や日本認知症学会認定専門医のいる医療機関を選びましょう。また初回受診時には、現在の症状や今までの病歴など、受診される方の状況をよく把握している家族の方が付き添われることをお勧めします。