第8回:少子・高齢社会の中の日本の福祉

掲載日:2017年3月10日(金)

現在、認知症を完治させる治療法は確立されていませんが、認知症の進行を遅らせる薬の開発は進んでいます。現在、日本で認知症治療薬として承認(保険適用)されている薬は、

①アリセプト(ドネペジル塩酸塩)
②レミニール(ガランタミン)
③リバスタッチパッチ/イクセロンパッチ【貼り薬】(リバスチグミン)

のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬3種類と、

④メマリー(メマチン)

のNMDA受容体拮抗薬の1種類となっています。

①から④の認知症治療薬は、アルツハイマー型認知症の状態に応じて処方されますが、レビー小体型認知症では①アリセプトのみ保険適用となります。また①から④の薬は、血管性認知症や前頭側頭型認知症には、その作用機序から保険適用外となっています。

つまり、今日、日本で承認されている4種類の認知症治療薬は、アルツハイマー型認知症(①から④)及びレビー小体型認知症(①)にのみ適用されるものだけなのです。その他、認知症の「BPSD(行動・心理症状:徘徊、暴言、暴力、不潔行為、不安等)」に対しては、向精神薬などが使用されていますが、最近では『抑肝散(よくかんさん)』という、神経の興奮を抑え、怒りやイライラ感を改善する『漢方薬』も積極的に用いられるようになってきました。

しかしながら、著名な認知症専門医でも薬の効果は2割程度であり、認知症の進行を遅らせるには、認知症の方のストレスを軽減すること、つまり、認知症の「焦り」や「不安」を感じさせない「適切な関わり方」や本人の状態にあった「生活環境」を工夫する効果の方が8割と、薬より効果が高いと仰っています。

また、最近の研究では、高血圧や糖尿病等の生活習慣病が血管性認知症のみならず、アルツハイマー型認知症の危険因子であることや、有酸素運動はアルツハイマー型認知症の発症リスクを低減させるとの報告もあります。いずれにしましても、認知症になることを可能な限り予防し、認知症になってもストレスを感じず、その人らしく安心して生活できる環境が望まれます。

■認知症 家族の接し方10ヶ条

  1. なじみの関係:顔なじみ落ち着き与える安心感
  2. 心の受容  :意に添ってこころ受け止め温かく
  3. 心のゆとり :怒らずに相手に合わせるゆとり持つ
  4. 説得より納得:理屈より気持ちを通わせ納得を
  5. 意欲の活性化:本人を生きいきさせるよい刺激
  6. 孤独にしない:寝たきりや孤独にしない気づかいを
  7. 人格の尊重 :プライドやプライバシーの尊重を
  8. 過去の体験は心のよりどころ:本人の過去の体験大切に
  9. 急激な変化を避ける:環境の急変避けて安住感
  10. 事故の防止を:事故防ぐ細かな工夫気配りを

出典:公益財団法人認知症予防財団

■認知症予防の10か条

  1. 塩分と動物性脂肪を控えたバランスのよい食事を
  2. 適度に運動を行い足腰を丈夫に
  3. 深酒とタバコはやめて規則正しい生活を
  4. 生活習慣病(高血圧、肥満など)の予防・早期発見・治療を
  5. 転倒に気をつけよう 頭の打撲はぼけ招く
  6. 興味と好奇心をもつように
  7. 考えをまとめて表現する習慣を
  8. こまやかな気配りをしたよい付き合いを
  9. いつも若々しくおしゃれ心を忘れずに
  10. くよくよしないで明るい気分で生活を

出典:公益財団法人認知症予防財団